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イベントレポート

第12回総会記念セミナー:1部:高齢者施設ってどんなところ?、2部:スウェーデンから学ぶ今後の日本の介護

報告

今年の「ら・し・さ総会イベント」は、「介護」をキーワードに2部構成の講演会を開催しました。第1部は「高齢者施設ってどんなところ? ~施設見学会の報告~」と題して、当法人副理事長の山田静江が、日本の医療・介護の現状を図や写真を映写しながら説明しました。そして講演の第2部は、日本の高齢者施設運営に長らく関わってきた舞浜倶楽部代表取締役社長のグスタフ・ストランデル氏による「スウェーデンから学ぶ今後の日本の介護」。ユーモアを交えた流暢な日本語で、聴衆を魅了しました。

2025年には団塊の世代が75歳になる中、高齢者の長期入院は制限され、在宅医療をうながす方向性があります。ここでいう「在宅介護」とは、自宅での介護だと思われがちですが、実は“病院以外のところで”という意味、つまり、施設も含めてなのです・・・・・・そう説明した後、おひとりさまや認知症高齢者が増加しつつあってますます自宅介護が難しくなっていく現状にも触れられたため、自然と、参加者の関心は「高齢者施設」に向かっていきました。

そこで、山田さんは、会場に1つの疑問を投げかけました。
「24時間介護をしてくれる高齢者施設は料金が高いという声をよく耳にしますが、本当にそうでしょうか?」
その意図するところは、「自宅で見てくれる人を時給1000円でお願いすると1ケ月80~100万円くらいかかる計算ですが、それと比べてどうでしょうか」ということでした。自宅での介護は、一見すると割安に見えますが、実際にはそれだけの負担を家族に強いていることになるのだとあらためて気づかされたのでした。
ひとことで「高齢者施設」といっても、24時間介護をしてくれるところもあれば違うところもあり、家具付きで身一つで入れるところもあるなど、様々な種類があります。そこで、セミナーの配布資料の「高齢者向け施設・住宅の一覧」をもとに、どんな施設があり、どんな人が入居できるのか、全体像をつかんだ後で、実際に見学してきた施設の写真が、スクリーンに映し出されていきました。
たとえば、「ユニット型個室」「機械浴」といった介護施設ならではの設備は、実際に見て見なければなかなかイメージがわかないものですが、写真で見て説明を受けることでとても臨場感がありました。また、洗面所やバルコニー、居室の雰囲気なども各施設でずいぶんと差があり、それが料金にも反映しているといった施設見学のポイントも、写真をもとに具体的に言及されていました。

山田さんが冒頭に出したクイズによると、75歳まで生きるのは、100人中、男性71.9人、女性85.9人。90歳まで生きるのは、男性21.3人、女性45.4人だそうです。介護は他人ごとではなく身近な問題だということ、自宅介護であっても短期入所などで、上手に施設を利用すべきであること、そして、入居(入所)しても合わなければ退所すればよいといった、山田さんの本音がたくさん詰まった、内容盛りだくさんのセミナーでした。

(らしさ正会員 竹下さくら)

 

 グスタフさんは、スウェーデン出身で学生時代は交換留学生などで日本の高校や大学に通った経験があるとのことでしたが、それにしても「流暢すぎる日本語」と絶妙のジョークには聴講の皆さんも驚きを隠せなかったようです。
講演では、グスタフさんの福祉現場での経験をお話しされました。「介護」という重いテーマであるのにもかかわらず、軽快なジョークを交えながら和やかな雰囲気で進められました。
「福祉先進国」と言われているスウェーデンですが、70年代までは誰も老人ホームに入居することを希望しなかったそうです。その後、80年代以降にスウェーデンでも地域密着型、複合型の施設や在宅介護が導入されて劇的な変化起きたこと、それを参考にするために介護保険導入前後に、日本から10万人以上の見学者が訪れたことなどの話がありました。
また、介護の技法としてのタクティール®を認知症の方に施すことにより信頼関係が増していく過程が映像で紹介されるなど、家庭での介護の参考になる内容もありました。認知症に関しては、ゆっくり進行するものであり急激な変化は起こらないことから、「ケアツリー」という考え方を持っており、自分らしく生きるためにQOL(生活の質)を高める例えとして「葉は希望・理解と連携」、「枝は環境・ハードとソフト」、「樹は社会制度・経済」、「根は社会・理念」との考えで活動を進めるべきとのことでした。
「死んでも老人ホームに入りたくはない」という考えは世界共通にあり、過去に使用されていた「問題行動」という言葉にみられるような「偏見」を「理解」に変えられれば「施設建設反対運動」などが起きる事態は避けられるはずだと語りました。
以下、グスタフさんのお話しの中から私がピックアップした「日本の介護」の参考にできる言葉を紹介します。
○世界最高の車を作る国で、世界最悪の「車いす」を作っていた日本
○外国では美味しい料理はからだに悪いが、日本では美味しくてもからだに良い
○介護は技術より理念が大事。理念があれば変わるのも早い
○お風呂はご褒美(気持ちが落ち着く)。清潔だけが目的ならばシャワーで足りる
○福祉も競争社会。経済力のある国しか福祉国家にはなれない
○自宅ではない在宅介護。個を大切にする「ユニット型」などでなければ入居はしない
○こども扱いはしない。日本には「おもてなし」の精神が根付いているはず
○「地域家族」の推奨。集う場としての老人ホームであるべき
50分間の短い時間は、ユーモアたっぷりのお話でさらに短く感じました。介護不安を抱えている聴講の皆様にも、たくさんのヒントが届いたことと思われます。                        (らしさ正会員 柳原誠)

タクティール® ケア (日本スウェーデン福祉研究所の登録商標)
緩和ケアにおけるスウェーデンの独特の手法でマッサージを行いながら認知症の方などとの信頼関係を築く。タクティールという言葉は「タクティリス(Taktilis)」から由来しており、「触れる」という事を意味している。
スウェーデンの医療の現場で用いられており、認知症のデイケア、グループホーム、老人ホームで認知症に対してのコミュニケーション手法として確立されている。日本でも利用者との信頼感を築く技法として取り入れる施設も増えている。

 

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