イベント情報
イベントレポート
平成27年総会イベント報告
平成27年7月23日(木)、東京ウィメンズプラザのホールにおいて、第13回NPO法人 ら・し・さ®の総会および総会イベントを開催いたしました。
正会員による総会の後、一般の方もご来場頂いての総会イベントを行いました。イベントは3部構成です。まず、若色信悟理事長による挨拶と事業報告などがあり、次に中田実千代副理事長が「ラスト・プランニングノート」改め、改訂新版「ら・し・さノート®」の紹介をいたしました。そしてイベントのメインとして、エッセイストの岸本葉子先生に『ちょっと早めの老い支度』のご講演を頂きました。
理事長の若色からは、NPO法人 ら・し・さ®が発足と同時に「ラスト・プランニングノート」の作成を手がけた10年前と現在で環境が変化したという話が出ました。当時は万が一への備えも「縁起でもない」と言われていましたが、今や「終活」はあたり前という、時代の移り変わり、そしてこれを準備しているか、いないかで今後の高齢社会の日本は大きく違ってくるのではないかということでした。さらにNPO法人 ら・し・さ®のノートが金融機関様などにOEM(相手先ブランドによる生産)供給をしているさりげない紹介があり、いわゆるエンディングノートは広まっているという話でした。また、NPO法人 ら・し・さ®の正会員であるFPが実務の中で経験した「終活」に関する45の事例を集めた『終活のリアル』(一般社団法人金融財政事情研究会発行)の紹介もありました。
続いて副理事長の中田が、新しくなった「ら・し・さノート®」の紹介をいたしました。これまで約10年、旧「ラスト・プランニングノート」をご利用頂いた皆様からの声を反映し、より見やすく、より書きやすく改訂したとのこと。
「より見やすく」については、文字や罫線の色を紫からグレーにし、また、文字を大きくゴシック体に変更、幅広い年代の方にご利用頂きやすくなったとのこと。
「より書きやすく」については、記入するページの行間を広くとり、また、内容的に「自分の歴史・将来」のページ数を増やしたこと。そして長生きや終活への理解、生き方の多様化を考慮して「時代に沿って」「あなたに合わせて」書けるようにしたとのことでした。エンディングノートは、財産や亡きあとのことを記入すると考えるのが一般的。しかし「ら・し・さノート®」は、旧ノートからずっと、より良く生きるために自分がどうしたいのか、ライフプランにこだわっていることがよく分かりました。
最後のメインイベントは、岸本葉子先生のセミナー『ちょっと早めの老い支度』です。素敵な笑顔と、柔らかな口調でゆっくりとお話が始まりました。ご著書と同じタイトルのご講演では、ご自身のがん治療とお父様の介護経験や、旧「ラスト・プランニングノート」への記入を通して得られた「情報の合間にあること」を織り交ぜてお話し頂きました。
老い支度には「危機管理の習慣」が大切として、大きなスケジュール表を目につきやすい場所に掲げること、行動を口に出し指さし確認をすること、躓(つまづ)き防止のため廊下に物を置かないことなど、実例に基づく具体的なアドバイスが参考になりました。
老いを迎えるには、近所の人との関係を良く保ち、お互いが支えあえることが大切ですが、実際はなかなかできない状況。そんな折、岸本先生にマンション管理組合の代表の役が回ってきて、マンション住民と言葉を交わす関係ができ、それが後々の自宅の玄関ドアの施錠で非常事態が発生したときに、管理組合でお話するようになった近所の人に助けを求め、救われたとのことです。人のために役に立つことを心がければ、いつか巡り巡って自分に還ってきますと。同感です。
岸本先生は、がんから10年経って、やっとエンディングノートを記入する気持ちになったそうで、当法人発行の「ラスト・プランニングノート」を薄さが気に入って選んでくださったそうです。最初に、ノートに書いておけばよかったと必要性を感じた時は、もう書けない状態であり、必要性を感じない時がノートの書き時ですとおっしゃいました。
ノートをお書きになって感じられたことを以下のように述べられました。
①まずは気になるところや優先度の高いところ、必要と思われるところから記入する。
②ノートは亡きあとに役立つと思いがちだが、今、生きているとき、つまり生前にもこのノートの情報が役に立ち、活用できる。
③ノートを書くリズムをもつこと。年1回、誕生日前に「ねんきん定期便」が届くたびに、繰り返しノートに目を通し、内容を増やしたり書き直したりして、更新する。
④ノートの記入は、自分のためにもなる。単に書いて終わりではなく、保険の見直しやカード類の整理に役立つ。
⑤ノートを書くには知らないことがたくさんあり、たとえば延命治療についても情報を知らないと書けないので、それを調べたりして知識も豊富になること。
⑥ノートの中にある「家族への思い」のページで、家族への一言は、自分のためではなく、家族のためである。だから後から家族が読んで感じることが大切で、そのようなことを思いながら書くのがよい。今、こうして生活しているのは家族からの恩を受けてのことであり、自分も恥らいながらも家族へのメッセージを書いている。
⑦言葉は品格で、美しい言葉は自分を清らかにさせる効果がある。今この時を自分らしく生きるために、ノートは役立つ。
エピソードをまじえ、大変興味深く聞かせて頂き、私たちFPにも別な観点からの気付きを与えてくださいました。また、エッセイストとして、NHKテレビ日曜朝の番組「NHK俳句」の司会者として、岸本先生の洗練された言葉使いを感じるご講演でした。拍手!
(報告 正会員 石原 敬子)