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イベントレポート
終活アドバイザー協会設立5周年記念講演会 第1部:「これからの時代に求められる承継寄付・遺贈寄付について」~メッセンジャーとしての重要な役割~
2021年9月4日(土)14:00~16:40
例年9月開催の終活アドバイザー協会講演会ですが、昨年(2020年)はコロナ感染防止のためやむなく中止になり、今年は終活アドバイザー協会設立5周年記念講演会としてYouTubeによるオンライン配信で行われました。
第1部:「これからの時代に求められる承継寄付・遺贈寄付について」~メッセンジャーとしての重要な役割~ 講師:三浦美樹 氏(一般社団法人日本承継寄付協会 代表理事・司法書士)
「承継寄付・遺贈寄付」と言うことばをはじめて聞かれた方もいらっしゃると思いますが、三浦美樹氏よりわかりやすく伝えてもらいましたので資料より抜粋して報告いたします。
遺贈寄付・承継寄付とは?
なぜ、この活動が必要とされているのか。
遺贈寄付とは、亡くなったときに残った財産の一部または全部を遺言等によって、社会課題解決のために使ってもらうよう、公益団体や学校法人などに寄付することで、承継寄付とは、遺贈寄付に限らず、生前からの寄付も含めた想いを次世代につなぐ寄付のことです。
日本承継寄付協会は、自分が亡くなった後にまで思いを繋ぎ、お金の循環、地域内でのお金の循環を支援し、承継寄付の間口を広げ、「おもいやりのお金が循環する社会」を目指している団体です。
「遺言書」を作成するときは、もめないための対策とか相続対策のために仕方ないから作るかという方が多い中、遺贈寄付の遺言書を作成される方は、お世話になった人たちや社会のために貢献したいという気持ちから作られるそうです。実際に遺贈寄付をされた方は、自分らしいお金の残し方ができて満足する人も多く、若い人の中には「自分の財産の行き先が明確になってこのように使われると思ったら働き甲斐に繋がった。」と言われる方もいるそうです。
遺贈寄付・承継寄付は、人生の最後までお金の行き先を考えられて、自分が大事にしている思いの承継もでき、社会貢献としても大きな役割があるのが特徴です。
遺贈寄付は少額でもできる
「寄付」というと、100万円ぐらいしないと恥ずかしいとか、お金持ちがする制度と考えられがちですが、遺贈寄付を受ける団体にとっては数万円でも嬉しいと感じているそうです。例えば、子どもを支援する団体に10万円を寄付することで貧困家庭の子どもが利用する居場所の食費300人分になり、学習会で利用する教材50人分になるそうです。子どもたちの経験にお金が使われることにつながります。
また、動物のために貢献したいと考えてる方は、動物医療に関係する団体などに寄付することによって、自分のお金を自分の思いを繋ぎながら役立つことに使ってもらえます。
自分がこういうことをしたかった、こういう思いがあったということを残しつつ、社会的な役割も担えるわけです。そして、寄付する先によっては、寄付者限定の特典もあるようです。
終活に関係する私たちだからこそできること
承継寄付・遺贈寄付の背景には、生涯未婚率の推移(総務省統計局 国勢調査より)から読み取ると年々おひとり様が増加していることがわかります。
おひとり様の中でも、甥っ子姪っ子もいない相続人不存在の場合、意思を残さない場合は国庫帰属財産となり、国にお金が行くことになります。国のために使ってもらうという考え方も大事ですが、もし、このような制度があることを知って、対策していれば、自分の貯めてきた財産を自分が大事に思っているところに渡るため、生前の満足度が高かったんじゃないかなと感じます。
最近では、クラウドファンディングなど寄付でお金を集める活動が認知度を上げてきたこともあり、寄付への関心も高まってます。
三浦さんが提示された日本ファンドレイジング協会の寄付市場の資料では、アメリカの個人寄付に比べて日本の個人寄付の現状は40分の1ですが、法人寄付はアメリカの3分の1でした。経営者は、社会貢献の意味合いが大きい寄付に興味を持っているそうです。ですが、このように、財産の行き場があるということを知らない人もいて、なかなか相談できる機関もないので、まずは、このような活動があるということを広めていくことが終活に関わる私たちができることだということを熱く語られていました。
遺贈寄付の現状
では、“遺贈寄付について現状はどのようになっているのか?”を知るために一般社団法人日本寄付協会が2020年遺贈寄付についての実態調査を行っています。この実態調査から見えてくるのは、「遺贈寄付」という方法を知らない人が多くいるということ、遺贈寄付の方法を知ると強い関心を示す人が多いということです。
ですが、現状は遺贈寄付に興味がある”と回答した方の 8割が何らかの手続きが必要とわかっていながらも「手続きが複雑」で「どこに相談してよいかわからない」という回答が目立ったそうです。そして、2割以上の方が遺贈寄付に関心があるが、遺贈寄付の遺言は1%にも満たないのが現状だそうです。遺贈寄付の意思はあっても、誰に相談すればいいのか、どこに寄付すればいいのかがわからないということも理由として上がっていました。また、相続や資産運用の実務家で遺贈寄付の対応ができる人が少ないということも課題のようでした。
遺贈寄付の基礎知識として
遺贈寄付を行う上で遺言書の作成が一番確実ですが、それ以外にも方法があるということをお話しくださいました。死因贈与契約による寄付、生命保険による寄付、信託による寄付、相続財産からの寄付、香典からの寄付などです。これらもすべて遺贈寄付です。
未来に向けて、今日からできること
遺贈寄付は、お金持ちの人だけがするものではなく、少額からでもできるので、自分の思いを伝え、人生の最後までお金の行き先を考えられる承継寄付を知ってほしいと思いました。
最後に、報告書を書いている私は、いずれ、おひとり様予備軍です。甥っ子や姪っ子はいますが、なんとなくお金をあげるという考え方から、自分が大事にしていることをもう一度見つめ、そこにお金を寄付するということを考えるきっかけになりました。そして、終活アドバイザーとして、少しでも多くの人に遺贈寄付を知って頂くために伝えるということも重要だと感じました。