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イベントレポート
【終活アドバイザー協会講演会】『地域包括ケアシステムを知ろう』 ~超高齢社会の医療・介護はこうなる~
NPO法人ら・し・さ主催
若色理事長の挨拶のあと、講演会に先立ち、先日開催された「海洋葬体験クルーズ参加イベント」のビデオ映像を、司会の廣木さんからの説明を交えて見ていただきました。参加者からは、「実際に体験しているようだった」「海洋散骨がどのように行われるのか、大変参考になった」という感想がありました。
続いて、「『地域包括ケアシステムを知ろう~超高齢社会の医療・介護はこうなる~』と題して、前一樹氏にご講演いただきました。講師の前氏はIT企業の経営者である一方、一般社団法人 地域包括ケア支援事業連合会の事務局長をされています。2年半前の当連合会立上げの時、在宅医療にはITの活用が必須であることから、この分野の専門家ということで事務局長に就任されたそうです。地域包括ケアシステムの根幹である「在宅医療」の近未来を伺いました。
日本の人口の将来推計を見ると、少子高齢化が進行し、医療や介護の需要拡大が予想できます。それを乗り越える策として、地域包括ケアシステムという地域を支えるしくみが打ち出されています。厚生労働省が提唱する地域包括ケアシステムは、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される社会システムです。人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は穏やかだが人口は減少する町村部など、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。地域包括ケアシステムは、保険者である市町村、都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要で、急務とされています。
これまでの医療は病院中心の病院医療で「治す」、「病気と闘う治療」、cureと言われるものでした。これからは自宅中心の在宅医療で「癒す」、「病気と共存する支援」を行うcareが重視されるように転換されます。人生の最期を自宅で迎えたいという人が多く、今後は病院のベッドが不足するという背景の下、在宅医療では医療費が大きく削減されるという現実もあり、自宅で最期のときを迎える人が増えていきます。在宅医療でも病院医療に劣らない医療の質と在宅療養支援診療所の増加が求められています。
地域包括支援システムの中心的役割を担うのは在宅医療・介護です。しかし、高齢者の在宅生活を支えていくためには、医療、介護従事者だけでなく、様々な分野の民間企業、ボランティア、NPO、社会福祉法人などの支援が必要で、連携していくことが大切です。
今後の在宅医療においては、遠隔診療や情報共有などにおいて、ICT(情報伝達技術)の活用が重要です。在宅医療では多職種の連携が前提となりますが、患者・被介護者を中心に、在宅医・家庭医・地域中核病院・介護スタッフ・訪問看護・薬局・ケアマネジャー・家族が、病院内にいるときと同様に、タイムリーに情報を共有できる情報ネットワークシステムの確立が必要です。多職種のスタッフによる見守り支援システムにはクラウド(インターネットなどを使ってデータなどを利用できるシステム)が利用されます。
2018年の医療制度改正(診療報酬改定)では、「遠隔診察を組み合わせた生活習慣病患者の指導や管理」「血圧や血糖等の遠隔モニタリングを活用した、早期の重症化予防」などが評価される(保険診療として認められる)ことが検討されています。
また、医師や看護師、介護士不足が叫ばれる中、ICTの活用により効率化や負担軽減が期待されます。さらに、記録や報告書作成にタブレッドなどの情報端末を利用することで、これまでの紙媒体を使ったときに比べ時間が短縮し、記入ミスも減少、患者のデータ管理にも役立ちます。往診要請の連絡が来たときには、まずは遠隔でバイタルチェック(脈拍、血圧、意識、呼吸、体温などの検査)を行い、少し様子見で良いと判断した場合には往診を見送るなど、医師の負担軽減も図れるようになるそうです。
さらに、遠隔診療は患者側にもメリットがあります。通院が難しい慢性的な疾患を有する患者が通院しなくても投薬可能になるなど、医療等を受ける側の負担が軽減されます。
このように、地域包括支援システムが推進される中、患者中心のデータ管理、タイムリーな多職種連携が必要な在宅医療には、「ICTの活用」が基盤となることを強調されていて、両者の親和性は高いとのことでした。
最後のNPO法人ら・し・さ事務局長の山田さんから、終活アドバイザー講座で学ぶ内容についての案内がありました。その中で、「患者の情報がICTにより一元化され、患者を見守るネットワークを担う多職種の担当者にタイムリーに伝わる」、この点において、私たちNPOら・し・さのエンディングノート(ら・し・さノート)も、その人の情報が凝縮されたもので、自分らしいエンディングを迎えるためには必要なツールであり、残された家族がその思いを読み取り、思い通りのエンディングに協力できる。どこか通じるものがあるのではと、まとめていたのが印象的でした。
終了後は、近くのカフェで参加者による交流会を開催しました。笑いの絶えない楽しい会となりました。